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「暑さ」で事業は止まるか?―人・ものを同時に襲う夏の「リソース途絶」リスクとBCP―

晴れた青空の下、配管が張り巡らされた工場施設の外観。強い日差しが差し、静かな産業風景が広がる

猛暑は「安全衛生」の問題から「事業継続」の問題へ

連日続く猛暑の中、多くの企業で水分・塩分補給や空調服の着用など熱中症予防の取り組みが行われています。

さらに、2025年6月からは改正労働安全衛生規則が施行され、職場での熱中症予防に関する体制整備や手順周知が企業に法的義務付けられています。


しかし、事業継続(BCP)の視点で見ると、暑さ対策は「従業員の体調管理」の枠組みだけでは不十分です。

近年の猛烈な暑さは、企業にとって不可欠な「(労働力)」と「もの(設備・システム)」という2大リソースを同時に奪い去る「環境災害」ともいえる状況になっています。

単なる安全衛生の域を超え、事業が止まるリスクとして捉え直す必要があります。

 

暑さが奪う「人」と「もの」という経営資源

職場での熱中症による死傷者は依然として高水準で推移しており、製造業や建設業、物流現場をはじめ、あらゆる現場で深刻な影響が出続けています。


厚生労働省「令和7年『職場における熱中症による死傷災害の発生状況』確定値」によると、職場での熱中症による死傷者数(死亡および休業4日以上)は2025年で年間1,803人に達し、統計開始以来最多を記録しました。前年比でも約43%増と大幅に跳ね上がっています。

発生業種も多岐にわたり、製造業(365人)や建設業(292人)を中心に、屋外作業だけでなく室内作業でも数多くの離脱者が発生しています。


企業はBCPにおける脅威として以下のような事態を考慮する必要があります。

  • キーパーソンの突然の離脱: 現場の指導者や特定業務の担当者が熱中症で即日離脱・長期離脱する。

  • 作業の中断・制限: 暑さ指数(WBGT)の上昇に伴い、安全確保のために作業時間の短縮や定期的な中断を余儀なくされ、全体の生産性が大きく低下する。


従業員の安全確保が最優先であることは言うまでもありません。その上で重要となるのが、「現場の人数が突如減ったとき、どの業務を優先して継続するか」「急な欠員を誰がどうカバーするか(代替体制)」という、BCPの運用設計です。

 

暑さの影響を受けるのは「人間」だけではありません。工場やオフィスの物やIT設備もまた、過酷な熱環境に晒されています。

  • 工場・オフィスの空調故障: 猛暑によるフル稼働が続き、エアコンや大型冷却設備が突発的に故障。室温が急上昇し、作業の継続そのものが不可能になる。

  • 製造機器・IT設備の熱暴走: 工場の機械トラブルのほか、データセンターや社内サーバールームの冷却不全によるシステムの緊急停止・データ破損リスク。 

  • 電力需要の逼迫: 地域的な電力需給逼迫による節電要請や計画停電リスク。


どれだけ人員の健康管理を徹底していても、生産ラインや基幹システムといったインフラが熱で停止すれば、事業は一瞬でストップしてしまいます。


猛暑リスクに備えるBCPの3つのポイント

人・設備が同時にダメージを受ける危険な暑さのリスクに対し、BCP上で具体的に落とし込むべきポイントは以下の3点です。


  1. 優先事業/業務の再確認

    人員欠員や設備制限が発生した際、「どの事業・業務を最優先で守り、どの業務を縮小・一時停止するか」の優先順位や目標復旧時間をあらかじめ明確にしておきます。


  2. 体制の再構築と事前点検

    特定個人への業務依存を脱却するために互いにフォローできる多重化体制を組むと同時に、暑さのピーク期を迎える前に、空調設備や非常用電源の点検・清掃を完了させておきます。


  3. 発動ルールの明文化(トリガーの設定)

    「暑さ指数(WBGT)◯以上」「熱中症警戒アラート発令時」「社内空調の故障時」など、どのような条件で・誰が判断し・どんな運用(リモートワークへの切り替え、業務縮小、作業停止など)に移行するかの基準をルールとして明記・周知します。


暑さを環境災害として捉えた事業継続対策へ

近年の過酷な猛暑はかつての「夏」とはもはや別物です。巨大地震や大型台風と同じように、暑さもまた事業を停止させる環境災害であるという認識を持ち、人・設備双方の観点からBCPをアップデートしていくことが、これからの時代に求められる組織の危機管理です。


【参考】

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