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BCPを気候変動リスクに対応させるには?


夏日に達するような季節外れの暖かさになったかと思えば、急に気温が下がって雨が降ったり、寒暖差が激しい今日このごろです。


さて、本日のコラムのテーマは「気候変動」です。

気候変動・地球温暖化は社会的な課題だと認識しつつも、BCP(事業継続計画)/BCM(事業継続マネジメント)の取り組みとして落とし込むところまではいっていない企業も多いのではないでしょうか。

総務・BCP担当者の方にとっても、ただでさえいろいろなリスクが出てくる時代なのに、気候変動にまで対応していられない…と感じる方もおられるでしょう。


そこでまず参考にしていただきたいのが、環境省が2019年に公表した『民間企業の気候変動適応ガイド ―気候リスクに備え、勝ち残るために―』です(2022年に改訂)。


このガイドでは、気候変動による事業への影響を様々な事例から知るだけでなく、BCPへ反映するにあたっても大いに参考になるでしょう。

農業・漁業など、第一次産業に従事する方は直に気候変動の影響を受けるので実感されている方も多いと思います。それ以外でも、たとえば気候変動の影響によって大雨・洪水など極端現象が増加し、水害による直接の被害を受ける(急性影響)ことも考えられますが、気候パターンの変化による中長期的な影響(慢性影響)も指摘されています。代表的なものは、スキー場の雪不足などです。


また、気温上昇による熱中症リスクの増加や労働生産性の低下も見過ごせません。

屋外での作業従事者はもちろん、屋内での従事者であっても適切な温度管理が不可欠になるだけでなく、精神的な疲労が蓄積して作業の困難さが増すとされています。


BCPへ反映するステップ


とはいえ、いきなりあらゆる気候変動リスクを全部門のBCPに反映するのは現実的ではありません。

下記のようなステップをご提案します。


1) 対象の絞り込み

事業継続のキーとなる重要業務、影響が大きい拠点に対象を絞りましょう。


2) 影響を受ける季節を中心に整理

会社の事業内容によっても異なりますが、気候変動リスクの影響を受けやすい時期、すなわち、いわゆる「出水期」の前後(5〜9月頃)に大雨・浸水害、猛暑、渇水など、気候変動の代表的なリスクの影響を受けやすい要因に絞って整理すると、少ない見直しで広範囲をカバーできます。


3) 影響を受ける対象がなにかによって分解する

従業員(欠勤、通勤困難など)、建物(浸水など)、電気・通信インフラ(停電リスク・通信断)、物流(入荷のストップ・遅配など)などに切り分けることで、既存のBCPのどこに反映すればよいかを整理することができます。


こうした切り分けは、気候変動に特化したものというよりは一般的なBCPの見直しにも欠かせない観点ではありますが、気候変動への適応という観点を取り入れることで、見直すきっかけになります。


おわりに -不確実な時代に対応するために-


気候変動による影響が出ていることは、様々な科学的根拠からいえることであっても、将来にわたってどの程度の変動があり、どの程度企業活動に影響するかを細かく予測するのは、現時点では難しいでしょう。

ただし、だからといって気候変動への対応を疎かにしてよいということにはなりません。


不確実な中でも適応してゆくにはどうしたらよいか? このガイドでも引用されているUKCIP(英国気候変動影響プログラム)はガイダンスのなかで4つの方策を示しています。


  • 「後悔しない(No-regret)方策」

将来の気候変動の程度に関わらず、実施する価値がある方策。現在の気候変動の実態に照らしても妥当であり、かつ将来的に予測される(不確実性が高い)気候変動の影響に対しても効果をもたらす取組。

  • 「後悔が少ない(Low-regret)方策」

比較的低コストで大きな効果を得ることができる。あるいは(不確実性がある)気候変動適応への投資を最大限生かすことができる方策。

  • 「Win-Win な方策」

気候変動に対する適応能力を高めつつ、同時に他の社会・環境・経済的課題に貢献する方策。

  • 「柔軟性のある方策」

適応策を一気に進めるのではなく、漸進的に進める方策。


完璧に対応していくのは難しいとしても、中長期的な課題の解決に対する示唆を与えてくれる選択肢といえます。

「いつ、何が起こるかわからない」という意味では、地震や感染症のようなリスクへの対応と共通する部分が多く、気候変動という視座から自社のBCPの盲点を洗い出していくことで、事業継続力を高めることにつながります。



参考


環境省『民間企業の気候変動適応ガイド ―気候リスクに備え、勝ち残るために―』

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