【キーワード解説】BIA(事業影響度分析):災害時に優先すべき業務をどう見極めるか

災害が起きたとき、すべての業務を続けられるでしょうか?
大規模な地震や風水害、停電、サイバー攻撃などで、事業所や情報システムが使えなくなったらどうなるでしょうか。従業員や設備が限られる状況では、平常時と同じようにすべての業務を続けることは困難です。
そこでBCP(事業継続計画)では、従業員などの安全確保を前提に、「何を優先して継続し、どの業務を先に復旧するか」を決めておく必要があります。この判断の土台となるのが、今回のキーワード「BIA」です。
たとえば、映画館で上映設備が故障して映画を上映できなくなれば、チケット収入が失われるだけでなく、来場者の減少によってポップコーンやドリンクなどのフードメニューの販売にも影響が及びます。一方、上映は可能だがフードメニューの販売ができなくなった場合、飲食販売による売上は失われますが、映画館が提供するサービスの根幹である映画の上映は続けられます。
このように、業務が停止した際の影響は、業務ごとに異なり、他の業務にも波及することがあります。限られた人員や資源の中で、どの業務を優先して維持・復旧すべきか。その判断の根拠を得るために行うのが、BIAです。
BIAは内閣府の事業継続ガイドラインでは事業影響度分析と書かれていますが、ビジネスインパクト分析と訳されることも多いです。
BIA(事業影響度分析)とは?
事業が止まった場合の影響を調べる分析
BIAは「Business Impact Analysis」の略で、事業の中断が経営や顧客などに及ぼす影響を調べ、優先して継続・復旧すべき業務と必要なリソースを明らかにするための分析です。
内閣府ガイドラインでは、事業中断による影響の評価、重要業務の選定、復旧目標の検討、必要な経営資源の特定などをBIAの重要な作業として示しています。
リスク分析との違いは?
BIAでは、まず「何が原因で止まるか」よりも「止まった結果、何が起こるか」を考えます。地震でもシステム障害でも、顧客への製品供給が途絶える影響は共通することがあるためです。また、ステークホルダー(利害関係者)からすれば、止まるという事実やそのことによる影響が気になるのであって、原因は二の次です。「理由はどうあれ、止まったらどうなるか」を知るための分析がBIAといえます。
一方、リスク分析では、自然災害などの個別のリスクの発生可能性や、それによって生じる被害を検討します。BIAとリスク分析はそれぞれ異なる視点を持ち、両者を組み合わせることで、効果的な事業継続対策につなげられます。
BIAでは何を分析するのか
業務停止の影響を「時間」とともに評価する
事業が止まった際の影響は、売上や利益の減少だけではありません。資金繰り、取引先の操業、社会的信用なども考慮します。さらに重要なのは、停止が数時間、1日、数日と長引くにつれて、影響がどのように拡大するかを確認することです。
例えば、製造業の受注システムが数時間停止しても、電話などで一部を代替できるかもしれません。しかし、数日間停止すれば受注処理や出荷が滞り、顧客の生産計画に影響するおそれがあります。一方、社内向けの報告資料の作成は、数日延期できる場合もあります。
影響を必ずしも厳密な金額に換算する必要はありません。1日当たりの売上や処理件数を確認し、数値化が難しいものは影響の大小で整理する方法も、内閣府のガイドラインで示されています。
中核事業から、優先すべき重要業務を絞り込む
中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」では、会社の存続に大きく関わる事業を「中核事業」、その遂行に必要な業務を「重要業務」として整理しています。
例えば、ある製品の製造・販売が中核事業なら、製造工程だけでなく、受注、原材料の調達、出荷、決済などの周辺の業務も欠かせません。優先順位は、財務面に加え、顧客との関係や社会的な要請も踏まえて検討し、最終的には経営者が判断します。
「部署ごとに何を再開したいか」ではなく、「会社の事業を成り立たせるために何が必要か」という視点をもつことが求められます。
復旧を妨げる「ボトルネック」を見つける
重要業務を再開するには、人員、設備、原材料、電力、通信、データ、輸送手段など様々なリソースが必要です。中小企業庁の指針は、必要な資源が利用できなくなった場合に事業を続けられるかを考え、特に欠かせない資源を把握する方法を示しています。
例えば、受注システムのバックアップがあっても、操作できる担当者が一人だけで、もしその人が不在であれば復旧ができないということになります。自社の工場が動いても、材料の調達や配送が止まっていれば納品できません。
こうしたボトルネックが分かれば、代替要員の育成、仕入先の複数化、手作業での代替手順など、優先して備える対策が見えてきます。
実効性のあるBCPにつなぐためのBIA
BIAは、分析表をきれいに作り上げることが目的ではありません。優先順位を経営者と現場で共有し、復旧目標を実現する対策へ結び付けることが重要です。最初から全業務を精密に調べようとせず、主要な製品・サービスから始める方法もあります。
業務内容や取引先、システムが変われば、優先順位や必要な資源も変化します。訓練などを通じて見直しを重ね、「本当に止められない仕事は何か」を問い続けることが、実効性のあるBCPを維持することにつながります。
参考資料
内閣府防災担当 (2023) 『事業継続ガイドライン(令和5年3月改定)』https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline202303.pdf
中小企業庁 (2012) 『中小企業BCP策定運用指針(第2版)』https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_b/bcpgl_03b_1_1.html




