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続 東日本大震災から15年:「節目」のタイミングで考える


「あの日から何年」。先週に引き続きこのようなコラムを書いている私も、マスメディアも、そのような捉え方をよくしてしまいます。「10年」「15年」といったキリの良い数字のときは、なおさらそのような特集が増えます。

もちろん、このような形で震災を振り返るのは、メモリアルな日を機に災害を思い出して、犠牲になった方を悼み、被害に遭われた方にお見舞い申し上げるとともに、今後の災害に備えたい、そのような思いからです。


しかし一方で、被災された方や大切な方を亡くされた人々にとって、そのように災害を「点」として捉えた「区切り」にどれだけの意味があるのだろうか、ということにも思いを馳せる必要があると考えています。

サンドウィッチマンの伊達みきおさんは、宮城県出身で震災当日は気仙沼市でのテレビロケ中に被災し、震災後も東北に寄り添い続けていることで知られていますが、先日のラジオ番組で「“節目”とかないんだよと現地の方に言われる。我々はそこを大事にしないといけない」(1)とおっしゃっていましたのが印象的です。こうした「節目」のときにだけ震災を思い出したように特集する側の姿勢に、複雑な思いを抱く被災者がいても不思議ではありません。


今も26,281名が避難生活を続けています(2月1日現在(2))。最多時の約47万名(3)に比べれば大幅に減ってはいますが、15年が経った今なお、地震・津波・原発、様々な理由から避難を余儀なくされている方が多くいる現実があります。震災を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」の本震はあの1回限りですが、「東日本大震災」は今も続いているのです。


復興に伴う道路・施設が整いつつあっても、地域のつながりや、被災者の心身のケアなどまだまだ復旧・復興は道半ばといえるでしょう。

震災を機に考えなければいけないのは、単に災害からの復旧・復興のことだけではありません。

その後の社会のあり方、共同体の再生、人々の仕事の確保、心の回復、多岐にわたる課題に、時間をかけて向き合っていかなければならないのです。


このコラムを読まれている方のほとんどは、まだ大きな災害には遭ったことのない「未災者」ではないかと思います(筆者の私もそうです)。日本は災害大国とはいえども、一生涯に災害に遭う回数はそれほど多くないのが実際のところです。

しかし、「未災」というある意味で元気な状態だからこそ、災害への向き合い方を考えるチャンスに恵まれているともいえます。

それは、個人としても、集落や自治体としても、そして企業・組織にとっても同じことです。


災害というとどうしても、発災直後の初動対応や避難生活に意識が向きがちです。しかし、実際にはその後の生活や事業の継続のほうが、はるかに長く、重い課題として続いていきます。企業にとっても、発災直後を何とか凌いだとしても、その後に取引の停滞、資金繰り、従業員の雇用維持、事業の再開といった問題が続きます。災害を「点」ではなく、「その後も続くもの」として線的・面的に捉えることで初めて、BCP(事業継続計画)やBCM(事業継続マネジメント)の意義を見出だせると思います。


その意味で、BCPは単なる災害対策マニュアルではありません。発災直後の安否確認や初動対応だけでなく、その後の事業復旧・継続、取引先対応、従業員の生活への配慮まで含めて考えるべきものです。しかし実際には、多くの企業のBCPが初動対応中心に組み立てられ、結果として「災害対策マニュアル」に近い内容にとどまってしまっている面もあるのではないでしょうか。


訓練についても、安否確認の通知が届くか、初動対応の役割分担ができるかといった確認はもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。発災直後、数週間後、あるいは数か月後に、事業をどう維持し、どう立て直していくのか。顧客や取引先への対応、代替手段の確保、従業員の働き方や生活への支援など、より長期的な視点を含めた訓練や検討ができているかどうかも問われています。


東日本大震災は地震・津波・原発事故という複合災害として、多くの課題を私たちに突きつけました。さらにその後も、熊本地震、北海道胆振東部地震、能登半島地震など、同じ地震災害でも被害の様相は一つとして同じではありません。次に来る災害では何が起きるのか。人と組織が生き残るために、何を想定し、何を備えるのか。そうしたことを、あえてこの「節目」をきっかけに一人ひとりが考える機会とすることに意味があると思います。



参考


(1) ニッポン放送「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー サタデー」 2026/3/7 放送より

(3) 復興庁 (2026/1/1)「復興の現状と今後の取組」 <https://www.reconstruction.go.jp/files/user/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20260101_genjoutorikumi.pdf>

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