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2024年能登半島地震から2年 〜建物被害と人的被害を考える〜



2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」から丸2年を迎えました。


改めて、能登半島地震で犠牲になった方々に哀悼の意を表し、被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げます。



人的被害にみる「能登半島地震」災害の様相


能登半島地震は、平成以降では死者・行方不明者の数が3番目に多かった地震災害です。

2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)、1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)が圧倒的に多いとはいえ、能登半島地震がそれらに次ぐ3番目という事実は意外と知られていないのではないでしょうか。


注目していただきたいのは内訳です。

地震・津波などにより直接被害を受けたことによって亡くなるいわゆる「直接死」の数も3番目で、避難生活などによって亡くなる「災害関連死」の数でも3番目なのです。



死者・行方不明者数

うち、「直接死」による死者数

うち、「災害関連死」等による死者数

うち、行方不明者数

2011/3/11

東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)

22,228

15,900

3,808

2,520

1995/1/17

兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)

6438 ※1

5515

920

3

2024/1/1

能登半島地震

700

228

470

2

2016/4/14〜

熊本地震

278

50

228 ※2

0

1993/7/12

北海道南西沖地震

230

202

※3

28


2016年の熊本地震では、直接死よりも災害関連死が多かったことが大きな話題となりました。

能登半島地震も災害関連死が直接死を上回っているのは同様ですが、直接死だけでも200名を超えており、かなり大きな被害になっています。


能登半島地震における直接死の過半数は、倒壊した建物の下敷きになったことによる圧死などとみられています。

これだけ建物の下敷きになった人が多かった理由のひとつは、「建物が壊れやすい地震の揺れが発生したから」です。


「建物が壊れやすい地震」とはつまり「震度が大きな地震」ではないのか?と思われる方も多いと思いますが、実は「震度」は人がどれくらい揺れを感じるかを基準に決められています。

地震の揺れにはさまざまな「周期」(一往復する時間の長さ)の成分が含まれますが、この周期がかなり短いもの(約0.5〜1秒:短周期)が人体の感覚として「大きく揺れた」と感じるため、この感覚に合致するように作られています。

一方、木造の建物などが大きく破壊される揺れの成分はやや短周期といわれる約1〜2秒の成分で、ユッサユッサとした揺れです。こうした約1〜2秒成分を多く含んだ地震の揺れは「キラーパルス」とも呼ばれます。

つまり、「震度が大きな地震」が必ずしも「建物が壊れやすい」とは限らないということです。


能登半島地震以上に圧死による死者の割合が高かった阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)では、このキラーパルスが卓越して大きかったことが知られています。

能登半島地震においても、穴水町などでは阪神・淡路大震災に匹敵する大きさのキラーパルスがあったことがわかっています。


能登半島地震で最大震度の「7」を観測した地点に志賀町の「富来」がありますが、この周辺では建物が全壊するような被害はみられませんでした。

一方で、キラーパルスが大きかった輪島市の中心部(K-NET輪島)は震度は「6強」であったにもかかわらず、木造建物の全壊率が30%を超えるなど、甚大な被害があったのです。

(東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は津波による死者・行方不明者が多数を占めたのと対照的に、キラーパルスの成分が少なかったために、建物被害による死者は比較的少なかったと言われています。)


時折、「今回は震度◯だったのに被害がなかった」ということを根拠に安全性を称える言説を目にしますが、かなり危うい見方であることがおわかりいただけるかと思います。


また、災害関連死の死者も多かったのはなぜでしょうか。

いろいろな要因が関係するため一言で表すのは難しいですが、高齢化率の高さや、地震が発生した季節、被災地へ支援を届けるためのアクセスの難しさなどが指摘されています。

能登半島特有の問題というわけでは決してなく、ほかの地域でも起こり得ることがわかるかと思います。


くわえて、能登半島地震では同じ年の9月に発生した豪雨により16名が命を落としました。地震の仮設住宅への浸水被害も発生するなど、「複合災害」の様相を呈しました。


これからくる地震に備えて


能登半島地震は決して“遠い出来事”ではありません。

南海トラフ巨大地震や首都直下地震のように、いつ発生してもおかしくない地震が控えています。


本日(1月6日)10時18分頃に島根県東部で発生した最大震度5強の地震においても、

能登半島地震以来はじめて「長周期地震動階級4」を観測するなど、地震への備えを改めて確認しておく必要性が浮き彫りになりました。


企業の防災・BCP(事業継続計画)を考えるうえでも、社員の人命が第一優先であることは変わりません。

事業所の耐震性はもちろんのこと、命を落とさないためには社員一人ひとりの自宅の耐震性も大切であることは改めて認識する必要があります。


1981年6月以降の日本の耐震基準を「新耐震基準」、それ以前を「旧耐震基準」と大別しますが、能登半島地震の調査においても全壊建物の多くは1980年以前の旧耐震基準であったことが調査からわかっています。

これまで地震に遭わなかったから古い家に住み続けても安全ということはなく、必要に応じて耐震補強や建て替えを行う必要があります。


自治体により制度の程度は異なりますが、耐震補強に対する費用の助成制度が設けられています。

社員一人ひとりの生活に立ち入ることは難しいのが現実ですが、どのような取り組みがあるかを紹介し、活用を促すことから始めてみましょう。



注釈


※1:兵庫県南部地震の直接死・災害関連死の詳細な内訳は公開されていないため、ここでは2005年兵庫県の発表資料における「災害関連死」の死者数919名に、2020年に宝塚市が関連死と認定した1名を加えた920名を採用している。「直接死」による死者数も同様に2005年兵庫県の発表資料による類推により5515名としているが、産経ニュース(2024)は5516名としており異同がある。

※2:2016年6月豪雨による被害で亡くなった方のうち熊本地震との関連が認められた5名(二次災害死)を含む。

※3:北海道南西沖地震(1993年)においては「災害関連死」による死者数は記録がない。これは、1995年の阪神・淡路大震災を契機に「災害関連死」の認定が始まったためであり、北海道南西沖地震において直接死以外の死亡者が発生していた可能性を排除するものではない。


参考


境 有紀 (2024)「大きな建物被害が生じてしまった理由」『DPRI Newsletter No.106』(京都大学防災研究所)

境 有紀ら (2024)「<災害調査報告>2024年能登半島地震における建物被害と発生した地震動」『京都大学防災研究所年報』Vol.67 A

産経ニュース (徳光 一輝)  (2024.1.10)「「直接死」過去3番目の災害に、原因は「キラーパルス」 能登半島地震」

産経ニュース (2025.1.29)「災害関連死、2次避難や仮設住宅もリスク 能登地震1年経ても「伴走型支援へ職員増強を」」

兵庫県 (2005.12.22)「阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について(平成17年12月22日記者発表)」

神戸新聞 (2022.1.7)「阪神・淡路大震災の死者数6434人のまま 20年に宝塚で認定の関連死、計上見送り」

警察庁 (2025.3.7)「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の警察措置と被害状況」

復興庁ほか (2025.2.14)「東日本大震災における震災関連死の死者数(令和6年12月31日現在調査結果)」

内閣府(防災)(2025.12.25)「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」


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