防災庁が本日発足! 国民への『緊急要請』は何を求めているのか?

本日(2026年11月2日)、日本の新しい行政機関「防災庁」が発足しました。
発足初日にあわせて、細野防災大臣は「事前防災徹底のための緊急要請」を国民に向けて発出しました[1]。
「緊急要請」で呼びかけられた取り組みとは?
国民向けの緊急要請では、大規模災害の発生時には国・都道府県・市町村が一丸となって全力で対応するとしたうえで、国難級の災害では行政だけによる対応には限界があることから、国民一人一人が「自らの命は自らが守る」という意識を持つ必要性を強調しています。
そのうえで、具体的に次の5つの取り組みの徹底を呼びかけています。
1. 家屋の耐震診断、耐震化、家具の固定
特に1981年(昭和56年)5月以前の旧耐震基準で建てられた住宅について、耐震診断を実施し、必要に応じて耐震化することを求めています。また、家具・家電の配置の見直しや固定も呼びかけています。
2. 水・食料、携帯用トイレ等の備蓄
最低限3日間、できれば1週間分の水や食料を備蓄するよう求められています。飲料水は調理に使う分も含めて1人1日3リットルが目安とされています。
日頃使う生活用品も含めて多めに買っておき、使ったら補充する習慣(ローリングストック)を身に付けることが呼びかけられています。
3. ハザードマップ、避難場所、避難経路の確認
地震・津波・河川氾濫などさまざまな災害種別のハザードマップを確認し、自宅・職場とその周辺のリスクを把握することが求められています。また、避難場所や避難経路も確認しておきましょう。
4. 非常持ち出し品の準備
避難生活で「すぐに必要になるもの」、「ないと困るもの」を(備蓄品とは別に)非常持ち出し品として洗い出し、リュック等に入れて玄関など持ち出しやすい場所に置いていくことが勧められています。
5. 防災訓練への参加
地域の防災訓練に参加し、避難生活・安否確認等の体験をしておくことが推奨されています。
また、災害時に近所の方々と協力し合える関係を築くことも呼びかけられています。
内容は特別目新しいものはなく一般的な事前防災としての備えですが、すべてを十分に整えられている方は、決して多くないのではないでしょうか。
緊急要請のポイント
まず1つ目に「家屋の耐震診断、耐震化、家具の固定」が掲げられていることが特徴的です。
避難生活に向けていくら備蓄品を準備していても、家屋の倒壊や家具の下敷きになることなどによって命を失ってしまっては、それらの備えも意味をなさなくなってしまいます。
特に地震災害に対しては、揺れによる被害を最小限に抑えることが何より大切です。
また、1981年6月に導入された新耐震基準についても、その後、阪神・淡路大震災の被害などを踏まえて、2000年6月に木造住宅の構造に関する規定が強化されました。旧耐震基準の建物の耐震診断を優先することはもちろんですが、1981年6月から2000年5月までに建築された木造住宅についても、耐震性能を確認しておくことが望まれます。
また、2つ目の備蓄品と4つ目の非常持ち出し品について、それぞれ独立した項目として準備を呼びかけている点も特徴的です。
もちろん両者には共通するものもありますが、非常持ち出し品は避難する際にすぐ持ち出すためのもの、備蓄品は在宅避難などで救援物資が届くまでの生活を維持するためのものです。
これらの違いを意識して準備することも大切です。
最後に掲げられている防災訓練への参加は、特に地域とのつながりが希薄な場合は参加へのハードルが高いかもしれません。いきなり防災訓練に参加するのが難しくても、地域のお祭りや催し物を通じて、顔の見える関係を増やしていくことが大切です。
そういう意味では、3点目のハザードマップ・避難場所・避難経路の確認は、お金を掛けずに始められるので、これまで特に備えをしていないという方にもおすすめです。
自治体のWebサイトや防災アプリ、または国土地理院のハザードマップポータルサイトを活用して、ハザードマップ・防災マップを確認し、身の回りのリスクを確認したうえで、緊急時の避難場所・避難所とそこに行くまでの安全な経路を確認しておきましょう。
日々の生活のなかで、すべての備えを完璧に整えることは難しいものです。
この機会に、一つずつでもできることから始めていきましょう。
「緊急要請」という表現について思うこと
今回の「緊急要請」について、11月2日に発表されることが10月中に明かされた時点で、さまざまな憶測が広がりました。例えば、何らかの大規模災害の発生が差し迫っているのではないか、あるいは、相次ぐサイバー攻撃や情報漏洩事件を背景に、社会インフラに関わる重大な事態が迫っているのではないか、といったものです[2]。
こうした噂に対して、細野防災庁設置準備担当相はXで「地震などの災害の予知情報が入っていることを契機とするものではありません。」と、あくまでも防災庁発足に伴う呼びかけであることを強調しました[3]。また、佐伯耕三内閣広報官はXで、上記のような憶測も紹介されているWebメディアの記事に言及する形で「11月2日は、防災庁が発足する日。国民の皆様への呼びかけの理由はそれだけです」と憶測を打ち消す説明をしています[4]。
たしかに、防災への備えを進めることは喫緊の課題ではありますが、「緊急要請」という言葉は、素直に読めば、要請そのものに緊急性があり、早急な対応が必要であると受け取られます。特に防災・災害情報の文脈における「緊急」は、差し迫った危険を連想させる言葉でもあります。国民向けの呼びかけにおいて、何が緊急なのかが十分に伝わらなかったことも、今回の憶測が広がった一因ではないでしょうか。
日頃からの防災対策を促すことは重要ですが、強い警告表現を多用することで、言葉の持つ重みが相対的に薄れてしまう、いわゆる「言葉のインフレ化」が懸念されます。
防災庁は、日本全体の防災施策を推進する司令塔組織として発足し、その発信は国民の防災に対する認識にも影響を与えるものです。だからこそ、強い表現の使用はできる限り抑制的に、そして適切な場面に限って行ってほしいと願います。
(出典)
[1] 防災庁 (2026/11/02)「事前防災徹底のための緊急要請」
[2] ビジネス+IT (2026/10/28)「第三次世界大戦?AI攻撃で社会麻痺?11/2に政府が全国民に最低3日分の備蓄を緊急要請:防災強化の要請と説明、ネットでは防災グッズを買い求める動きも」
[3] 細野豪志 Xのポスト(2026/10/29 07:43)
[4] 内閣広報官(色々投稿試し中) Xのポスト (2026/10/31 12:41)




