【キーワード解説】目標復旧時間(RTO):重要業務を「いつまでに」再開するか

「何を優先するか」の次は、「いつまでに」再開するか
前回のコラムでは「BIA(事業影響度分析・ビジネスインパクト分析)」を通じて、業務が停止した場合の影響を調べ、優先して継続・復旧すべき業務を見極める考え方を紹介しました。
しかし、優先すべき重要業務を把握しただけでは、具体的にどのような備えをすべきかは決まりません。発災から数時間以内にすぐ再開すべき業務と、数日間の停止に耐えられる業務とでは、必要な対策が大きく異なるためです。
そこで今回は、「いつまでに復旧するか」を考える指標として、目標復旧時間(RTO)を解説します。
目標復旧時間(RTO)とは?
目標復旧時間=RTOは「Recovery Time Objective」の略で、地震・風水害・システム障害などによって停止した重要業務を、どれくらいの時間で復旧させるかという目標です。内閣府(※)「事業継続ガイドライン」でも、重要業務ごとにRTOを決めることが示されています[1]。
例えば、製造業の受注業務についてたとえば「停止から6時間以内に注文の受付を再開する」と決めた場合、その「6時間」がRTOにあたります。
ここで気をつけたいのは、RTOが「実際の復旧までに要する時間(あるいは過去に要した時間)」や「必ず復旧できる時間」でもないことです。決めた目標を達成できるよう、必要な体制や手段を平常時から整えておく必要があります。
目標復旧時間をどう決めるのか?
BIAで把握した「業務停止の影響」をもとに考える
目標復旧時間は短く設定しておけば安心と思われるかもしれません。しかし、すべての業務に「1時間以内」といった厳しいRTOを設定すれば、多大な人員や設備、費用が必要になり、現実的な目標になりません。
目標復旧時間を考える出発点は、前回紹介したBIAです。業務停止による売上や顧客、契約などへの影響が、時間とともにどのように大きくなるかを確認し、停止を許容できる時間を見積もります。
内閣府のガイドラインでは、この許容限界より早く目標復旧時間を設定し、対策の実施可能性を検討したうえで、経営判断により最終決定する考え方が示されています[1]。
仮に、ある受注業務が24時間止まると重要な納期に影響すると判断したなら、その前に再開できるよう目標を検討します。ただし「24時間まで耐えられるからRTOも24時間でよい」とは限らず、反対に「とにかく最短」が正解でもないところが難しいところです。
また、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」では、目標復旧時間を設定する際に考慮することとして ・取引先やサプライチェーンからの要請 ・自社の財務状況に基づく、業務停止に耐えられる時間
を挙げています[2]。
社内の都合だけでなく、顧客がいつまで待てるのか、停止による資金繰りへの影響はどれほどかも確認したいところです。
設定した目標復旧時間を実現するために
目標復旧時間は「決めて終わり」ではありません。例えば「6時間以内に受注を再開」と定めても、再開に必要な受注システムの復旧に「1日」かかるのであれば、受注システムの復旧を待っているだけでは目標を達成できません。
こうした場合、予備システムへの切り替え、電話や紙による仮受付、担当者の代行体制などを検討します。システムを完全に元へ戻すことだけが、業務を再開する方法ではないからです。
一方、仮受付だけを再開した状態を「復旧」とみなすのか、通常と同じ処理能力まで戻すのかによって、必要な時間は変わります。内閣府ガイドラインでは、目標復旧時間とともに、どの水準まで復旧させるかを示す目標復旧レベル(RLO)も決めることとしています。
さらに、担当者と連絡が取れるか、仕入先や物流は対応できるかなど、必要な人員・設備・情報がそろうかも確認が必要です。実際に訓練をしてみると、想定以上に時間がかかることもあります。内閣府のガイドラインも、目標時間内の業務再開を確かめる訓練が必要と謳っています。
様々な要素が絡み合うため、目標復旧時間を「6時間以内」と設定しても、その6時間をすべて復旧作業に使えるわけではありません。災害時には、まず従業員の安全を確保し、設備等の被害状況を調べ、業務の再開の取捨選択を行う必要があります。
たとえば、業務が停止してから被害状況の把握と対応方針の決定に3時間を費やした場合、残りの3時間で代替手段への切り替えや業務の再開を進めなければ、「6時間以内」という目標を達成できません。
災害情報や被害状況を迅速に受け取って把握することは重要ですが、それだけで事業の復旧が早まるわけではありません。得られた情報をもとに状況を把握し、必要な判断と対応につなげることが求められます。そのためにも、災害時にどのような情報が必要で、誰が収集・共有し、誰が復旧方針を判断するのかを、平常時から整理しておくことが大切です。
実行可能な目標に落とし込むために
目標復旧時間は、ただ復旧を急がせるための数字ではありません。限られた経営資源をどこに振り向け、何をどの順番で整えるかを判断するための目安です。
まずは一つの重要業務について、「いつまで停止が許容されるか」「現状では何時間で再開できるか」を比べてみましょう。両者に差があれば、そこに優先して取り組むべきBCP対策が見えてきます。
次回は、どのレベルまで戻すかというRLO(目標復旧レベル)とRPO(目標復旧時点)を取り上げて、復旧の「時間」以外の目標について考えます。
参考資料
[1] 内閣府(防災担当)(2023)『事業継続ガイドライン(令和5年3月改定)』, p.11-13. ほか
※ なお、内閣府(防災担当)は2026年11月2日に防災庁に改組されましたが、ガイドラインが発表された時点では内閣府(防災担当)であったため、その表記を踏襲しています。
[2] 中小企業庁 (2012)『中小企業BCP策定運用指針(第2版)』




