【11月5日は津波防災の日&世界津波の日】今見直そう、地震・津波への備え
- アールシーソリューション株式会社
- 2 日前
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11月5日は「津波防災の日」&「世界津波の日」
みなさんは、防災に関する日(メモリアルデー)といえば何が思い浮かぶでしょうか。
名前のついたものでいえば、9月1日の「防災の日」が有名ではないかと思います。
今回ご紹介する「津波防災の日」・「世界津波の日」は、いずれも11月5日と定められています。
防災の日より知名度は低いかもしれませんが、どのようなメモリアルデーなのでしょうか?
11月5日という日付は、太平洋沿岸に多大な津波被害をもたらし、数千人の方が亡くなった1854年の安政南海地震が発生した日にちなんでいます。
(日付は新暦の11月5日に設定されていますが、地震が発生したのは旧暦の11月5日なので、今の暦に換算するとクリスマス前後(12月24日)にあたります。)
2011年の東日本大震災の直後、津波対策推進法により11月5日を「津波防災の日」と制定し、2015年には国連総会で「世界津波の日」(World Tsunami Awareness Day) としても採択されました。
この日が津波防災のメモリアルデーに位置づけられたのは、安政南海地震が「稲むらの火」の逸話が生まれたことで知られているためです。

安政南海地震が発生したときの紀伊国広村(今の和歌山県広川町)での出来事です。
実業家・濱口 梧陵(はまぐち ごりょう)は津波が来襲した村で避難を呼びかけるなかで、暗闇で逃げまどう人々を誘導するために若者らとともに稲むら(稲叢)に松明で火をつけてまわり、高台の神社へ人々をみちびき、多くの命を救ったと言われています。
大津波による被害のあった明治三陸地震のあと、このエピソードが紹介されます。これに感銘を受けた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は脚色したうえで「A Living God」(生神)という短編小説でこの偉業を紹介します。さらに後年、和歌山県の小学校教員・中井常蔵がこれを児童向けに翻案した「燃ゆる稲むら」を文部省の教材公募に応募、見事入選し、「稲むらの火」のタイトルで1937年から国語読本(教科書)に採用され、この逸話の普及に貢献しました。
戦後、国定教科書制度の廃止に伴い1947年限りで「稲むらの火」の掲載は終了しますが、スマトラ島沖地震(2004年)などで再び注目を集め、2011年度から光村図書の小学5年生向けの国語教科書に「稲むらの火」も紹介する形で濱口の伝記が掲載されました。
さて、「稲むらの火」は事実をもとにした物語ですが、このなかに描かれていない濱口梧陵の偉業があります。
それは、被災後の堤防の建設などの復興事業です。
私財を投入して堤防の建設を指示し、被災により職を失った村人の雇用も確保するという、将来の津波に備えた防災事業を成し遂げました。
1946年に発生した昭和南海地震でも広村(広川町)は津波に襲われましたが、この広村堤防により大幅に被害が軽減されたのです。
11月5日にあわせた取り組みのご紹介
この津波防災の日・世界津波の日にあわせて、各地で様々な取り組みが行われています。
上記で告知されている以外にも様々な自治体独自の取り組みがありますので、みなさんのお住まいもしくは事業所のある自治体で、どのような訓練やイベントがあるかぜひご確認ください。
また、弊社・アールシーソリューションもこれにあわせて、総合防災アプリ「PREP」および緊急地震速報通知アプリ「ゆれくるコール」(2010年11月5日リリース)において11月5日午前10時頃に訓練通知の配信を行います。
アプリをお使いの方は、大きな地震があったときに正常にプッシュ通知を受け取れるか確認するためにも、訓練機能をぜひご活用ください。
「11月5日に緊急地震速報訓練を実施します」(アールシーソリューション)
今こそ南海トラフ地震への備えを
今年9月、政府の地震調査委員会は「南海トラフの地震活動の長期評価」を改訂し、南海トラフ地震発生確率の発表方法を一部変更しました。
これまで30年以内発生確率値は「80%程度」とされていましたが、発生確率計算モデルの見直しを行い、2つのモデルによる「60%~90%程度以上」と「20%~50%」という2つの値が併記される形になりました。
多くの海溝型地震で用いられている地震発生履歴に基づく計算モデル(BPTモデル)では「20%~50%」となる一方、これに地盤の隆起量のデータを加味した計算モデル(SSD-BPTモデル)では「60%~90%程度以上」となるというのが最新の知見をもとにした結果ということになります。
2つの確率値には大きな開きがあり、これに対応する国や自治体、そしてわれわれ住民にとっては混乱するという声もありますが、これが現在の科学の限界という認識が必要です。
地震調査委員会は海溝型地震の発生確率に基づく3段階のランク付けを行っており、26%以上はすべて「Ⅲランク」(高い)に位置づけられています。このため、どちらのモデルの結果でも最も危険性の高い「Ⅲランク」評価であることは変わらず、いつ地震が発生してもおかしくないという認識のもと「防災対策や日頃からの備えに引き続き努めていくことが必要」ということになります。
この機会に改めてお伝えしたいのは、特に太平洋沿岸の地域では地震・津波の両方の対策を考えておくのが必須ということです。
阪神・淡路大震災(1995年)では主に地震の揺れによる被害が多く、死因の8割程度が圧死でした。一方、東日本大震災(2011年)では地震の揺れも非常に大きかったものの、津波による被害が圧倒的に多く、死因の9割以上は津波に巻き込まれたことによる溺死です。
もしも、阪神・淡路大震災級の「地震」による被害と、東日本大震災級の「津波」による被害が同時に発生したら……。考えるだけでも恐ろしいですが、それが起こり得ると想定されているのが南海トラフ巨大地震です。
東日本大震災によって地震による津波災害の恐ろしさは再認識されましたが、相対的に、地震による直接の被害はないがしろにされている印象は否めません。
個人や家庭での対策でも、事業所の防災やBCPにおいても、地震・津波の両輪(そしてそれ以外の災害・リスクも)の対策を考えておくべきということを頭の片隅に置いていただき、来たるべき国難級の災害に備えを進めていきましょう。
参考
内閣府(防災担当)(2014)『ぼうさい』平成26年秋号 No.76, p.4-6. <https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h26/76/index.html>
地震調査委員会・地震調査研究推進本部 (2025) 「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)について」 <https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/#nankai_t>
内城喜貴 (2025)「南海トラフ巨大地震、二つの発生確率を併記 「いつ起きてもおかしくない」と地震調査委」(Science Portal) <https://scienceportal.jst.go.jp/explore/review/20251022_e01/>
