工場再開断念の事例から見るBCP戦略

■ フジパン熊本工場が再開を断念した背景
今年7月末の熊本地震から2か月あまりが経過し、復旧・事業再開を果たした企業がある一方で、撤退を決断する企業も出てきています。この点については以前のコラムでも触れましたが、そのような中、製パン大手フジパンの熊本工場が生産再開を断念するという発表がありました(1)。
熊本県宇城市にある同工場は、フジパングループの九州フジパンが2003年から運営してきた生産拠点です。2016年の熊本地震で建物や生産設備が被災しながらも復旧を果たしましたが、今年の地震で再び甚大な被害を受け、生産を中止していました。今回の発表によれば、被害が広範囲に及び、設備の復旧や生産体制の再構築には長い時間を要することから、生産拠点としての再開を断念し、物流拠点として事業を継続する方針が示されています(2)。
■ BCPの観点から見た今回の判断
このような判断が可能だった背景には、グループ内に全国規模の生産網があり、他の工場による代替生産が比較的整えやすいという大手企業ならではの強みがあります。BCPの観点で整理すると、今回の決断は「代替戦略」と「現地復旧戦略」を組み合わせた対応といえるでしょう。生産機能は代替拠点に任せつつ、物流機能のみを現地に残すことで、供給体制の維持と地域雇用の確保を両立しようとする姿勢がうかがえます。
もっとも、生産と物流では業務内容が大きく異なるため、雇用を維持できないケースも想定されます。経営者にとっては非常に重い判断であったことは間違いありませんが、部分的な撤退と継続を組み合わせる柔軟な戦略は、事業継続の観点からも参考になる事例といえると思います。
出典 (1) 熊本日日新聞「フジパン熊本工場の再開断念 宇城市 物流拠点として継続<2026年熊本地震>」(2026年10月5日) (2) フジパングループ本社株式会社「令和8年熊本地震による熊本工場の被害状況及び今後について」(2026年10月5日)
※ 本コラムは10月6日8時時点の情報をもとに執筆しています。今後、状況の変化により、最新の情報とは一致しない可能性があります。必要に応じて、内容を更新または差し替える場合があります。



