熊本地震から2か月 ―― 取引先が止まるとき、中小企業は何を決めておくべきか

熊本地震から2か月が経過するなか、日本製紙八代工場の復旧の目処が立たず、地元の経済を直撃しているという報道がありました。日本製紙の取引先企業は熊本県内に300社以上あり、同社関連の生産額は八代市全体の18%に占めるとされており、影響は多くの企業に及んでいます。工場の操業停止により稼働が4割減少した企業もあるとされ、さらに復旧の見通しが立たない状況は、中小企業にとって極めて厳しい経営環境です。
私は8月10日のコラムで、サプライチェーンの下位が止まれば全体が止まるという構造的な弱点について触れました。しかし今回のケースはその逆です。大企業そのものが止まることで、中小企業の事業が止まる。サプライチェーンBCPの脆弱性が、別の角度から顕在化したと言えます。では、こうした地域の中小企業はどのようなBCPを策定していたのでしょうか。まず、自社が被災するリスクについては計画していたでしょう。大手製造業の操業を止めてしまったら、他社に転注される恐れがあります。事業継続のための備えは当然行っていたはずですし、取引先からも求められていたでしょう。また、売上の多くを占める取引であれば、重要事業として位置づけていたと考えられます。
しかし、今回問われているのはその先です。
「取引先の操業が止まる事態をどこまで想定していたか」
そして、
「その状況がどのくらいの期間なら資金繰りは大丈夫か」
という点です。もし6か月間は耐えられる計画であれば、残り4か月、復旧の目処を見極めることができます。しかし、目処が立たない場合、待つこと自体がリスクになります。事業そのものを断念し、他の事業にリソースを振り向けて売上を確保する判断が必要になります。これはもはやBCPではなく、新たな事業計画の領域です。
BCPは「会社を守る計画」です。しかし、長期の事業中断が確定した場合、企業は「どこまで守り、どこから別の事業を始めるか」という判断を迫られます。撤退も含めた判断をどの時点で行うのか。どの条件なら撤退に踏み切るのか。これは、BCPの中にあらかじめ言語化しておくべき重要な項目です。
熊本地震から2か月。今回の日本製紙八代工場の事例は、自社が被災するリスクだけでなく、取引先が止まるリスクをどこまで想定していたかを問う出来事となってしまいました。災害は企業の規模に関係なく、突然に事業継続の可能性を奪います。だからこそ、BCPには「守り」と「見切り」の両方が必要です。その判断をどこまで言語化していたか。今回の地震が改めて私たちに突きつけた課題だと感じています。
※本コラムは9月29日8時時点の情報をもとに執筆しています。今後、被害状況や各企業の対応が明らかになるにつれ、内容が必ずしも適切でなくなる可能性があります。必要に応じて、内容を更新または差し替える場合があります。




